留学生の志望理由書には、大きな武器があります。
母国での経験です。
日本人の受験生には書けない、あなただけの経験。それは、志望理由書の中で強い個性になります。
しかし——多くの学生が、この武器をうまく使えていません。
経験は書いてある。でも、評価されない。
なぜでしょうか。
「経験の羅列」になっていませんか
よくある志望理由書を見てみましょう。
「私は母国で、○○という経験をしました」 「高校時代に、△△の活動に参加しました」 「家族が□□の仕事をしていて、その姿を見て育ちました」
それで、終わっている。
これが問題です。
経験は書いてある。しかし、「だから、この学部で学ぶ必要がある」というつながりがない。
審査する側は、こう思います。
「立派な経験ですね。それで?」
つながっていない経験は、ただの自己紹介
厳しいことを言います。
学びにつながっていない経験は、志望理由書では役に立ちません。
なぜなら、志望理由書は「自分がどんな人間か」を伝える書類ではないからです。それは自己PR文の役割です。
志望理由書が伝えるべきなのは、「なぜこの学部で学ぶ必要があるか」です。
経験を書く目的は、その必要性を証明するためです。経験そのものを見せるためではありません。
審査側が感じる「不安」
経験と学びがつながっていない志望理由書を読むと、審査する側は次のような不安を持ちます。
「経験はあるが、なぜ『学問として』学ぶ必要があるのかが伝わらない」
これは重要な点です。
経験があるだけなら、大学は必要ありません。すでに経験しているのですから。
大学が必要なのは、その経験を、学問の力で理解し直したいからのはずです。そこが書かれていないと、「なぜ大学に来るのか」がわからないのです。
経験を「学び」につなげる4つのステップ
では、どうすればいいのか。
経験を志望理由につなげるには、次の流れが必要です。
① 経験
↓
② 気づき・問題意識
↓
③ 学びたいこと
↓
④ 大学での研究
②と③が抜けている志望理由書が、非常に多いのです。
順に見ていきましょう。
① 経験:何が起きたか
これは、多くの学生が書けています。
具体的に、いつ、どこで、何を経験したか。ここは事実を書けば済みます。
② 気づき・問題意識:なぜそれが心に残ったのか
ここが最重要です。そして、最も抜けやすい部分です。
その経験を通じて、あなたは何に気づいたのか。何を疑問に思ったのか。何がおかしいと感じたのか。
自問してください。
- なぜ、その経験が心に残ったのか
- そのとき、どんな疑問が生まれたのか
- 「なぜこうなっているのだろう」と思ったことは何か
ここで生まれる「問い」が、志望理由書の核心になります。
③ 学びたいこと:その問いに答えるには、何を学ぶ必要があるか
問いが生まれたら、次はその問いに答える方法を探します。
その問いは、どの学問分野の問いなのか。経済学か、社会学か、教育学か、法学か。
ここで、学部が決まります。
逆に言えば、問いが明確でないと、学部を選ぶ理由も曖昧になります。
④ 大学での研究:その学問を、この大学でどう学ぶか
最後に、その学問をこの大学のこの学部で学ぶ理由を書きます。
授業名、教員名、プログラム名など、具体的な情報を使います。
例で考えてみる
抽象的な話が続いたので、考え方の流れを例で示します。
❌ つながっていない書き方
「私は母国で、都市と地方の生活の違いを見てきました。だから社会学部を志望します」
——②と③が飛んでいます。 なぜ社会学部なのかが、わかりません。
⭕ つながっている考え方の流れ
① 経験 地方の親戚を訪ねるたび、都市部との生活の差を目にしてきた ② 気づき・問題意識 なぜ、同じ国の中で、住む場所によってこれほど差が生まれるのか この差は、自然に生まれたのか。それとも構造的な原因があるのか ③ 学びたいこと この「地域による格差」を、感覚ではなく、 社会構造の問題として理解したい そのためには、社会学の方法論(社会調査・統計)が必要だ ④ 大学での研究 ○○大学社会学部には、地域社会と格差を専門とする△△教授がおり、 「◇◇論」という授業では、まさにこのテーマを扱っている
違いが、わかるでしょうか。
②の「問い」があるから、③の「学ぶ必要性」が生まれています。
「特別な経験」でなくていい
ここで、安心してほしいことを言います。
特別な経験は、必要ありません。
「私には、書けるような特別な経験がない」と悩む学生がいます。しかし、審査する側は、劇的な体験談を求めているわけではありません。
大切なのは、経験の大きさではなく、そこから生まれた問いの深さです。
日常の中で「なぜだろう」と思ったこと。当たり前だと思っていたことに、疑問を持った瞬間。それで十分です。
むしろ、身近な経験から深い問いを立てられる学生のほうが、学問に向いています。
「一般論」ではなく「自分の話」を書く
もう1つ、注意点があります。
「母国では、○○という問題があります」
このような一般論を書く学生がいます。
これは、あなたの経験ではありません。ニュースや教科書に書いてあることです。
書くべきなのは、あなた自身が、その問題をどう体験したかです。
「〇〇という問題があります」ではなく、 「私は、〇〇を目の当たりにしました。そのとき、△△と感じました」
「私」が主語になっているか。 これを確認してください。
まとめ
- 母国での経験は、留学生だけの武器
- しかし、学びにつながっていない経験は役に立たない
- 必要なのは、経験 → 気づき・問い → 学びたいこと → 大学での研究という流れ
- 最も抜けやすいのは、「問い」の部分
- 特別な経験は必要ない。日常の疑問から深い問いは生まれる
- 一般論ではなく、「私」が主語の話を書く
あなたの経験は、価値があります。
その価値を伝えるには、「その経験から、どんな問いが生まれたのか」を書いてください。
問いこそが、学問の入り口です。
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