「志望理由書は、本当に読まれているのだろうか」
留学生からよく聞かれる質問です。
答えは、読まれています。しかも、かなり真剣に。
私は大学の入試の仕事で、留学生の志望理由書を数多く見てきました。この記事では、その現場で何が起きているのかをお話しします。
「どう評価されるか」がわかれば、「何を書くべきか」も見えてきます。
そもそも、志望理由書とは何の書類か
まず、基本の確認から。
志望理由書とは、「なぜこの大学・この学部に入学したいのか」を自分の言葉で説明する書類です。日本の留学生入試では、多くの大学が提出を求めています。
似た書類に「自己PR文」がありますが、目的がまったく違います。
| 書類 | 中心にあるもの |
|---|---|
| 自己PR文 | 自分(どんな人間か) |
| 志望理由書 | 大学・学部(なぜここで学ぶ必要があるか) |
ここを取り違えている志望理由書は、非常に多いです。自分の長所や経験ばかり書いてあって、大学のことがほとんど書かれていない。それは自己PR文であって、志望理由書ではありません。
志望理由書は「唯一の書類」である
出願書類には、いろいろなものがあります。それぞれが伝えられることを整理してみましょう。
| 書類 | 伝わること | 伝わらないこと |
|---|---|---|
| EJUスコア | 日本語力・基礎学力 | 学ぶ目的・将来の目標 |
| JLPTスコア | 日本語能力の水準 | なぜ学ぶのか |
| 成績証明書 | これまでの学習実績 | これからのビジョン |
| 推薦状 | 第三者から見た評価 | 本人の考え |
| 志望理由書 | 学ぶ目的・大学選択の理由・入学後の計画・将来の目標 | — |
見てのとおりです。
あなた自身の考えを、あなた自身の言葉で伝えられる書類は、志望理由書だけです。他のどの書類も、それを代わりにやってはくれません。
だからこそ、大学は志望理由書を真剣に読みます。
スコアが高くても落ちることがある理由
ここは、ぜひ知っておいてください。
EJUやJLPTのスコアは「入学の資格」を示すもので、「入学の理由」を示すものではありません。
「EJUで高得点を取ったから大丈夫」と考えて、志望理由書の準備を後回しにする学生がいます。しかし入試の現場では、スコアは「入学できる学力水準にあるか」を確認するために使われ、「この学生を入学させたい理由」は志望理由書と面接から判断されます。
実際に、日本語の試験の成績がよくても不合格になることはあります。逆に、成績がそれほど高くなくても合格することもあります。
スコアは「資格」を示す。志望理由書は「理由」を示す。 この2つは、まったく別のものです。
【現場の話】書類を受け取って、最初に何をするか
ここからは、実際の流れです。
入試課が出願書類を受け取ったとき、内容を読む前に「形式確認」をします。
意外に思われるかもしれませんが、まず見るのは中身ではありません。次のような点です。
| 確認すること | よくあるミス |
|---|---|
| 大学名・学部名が正しいか | 別の大学名が残っている |
| 指定の文字数を守っているか | 大幅に少ない・超えている |
| 指定の様式を使っているか | 様式外の紙に書いている |
| 氏名・国籍などの記入漏れ | 空欄がある |
| 提出期限・方法を守っているか | 期限後の提出、方法違い |
このうち、「大学名・学部名の誤記」は、決して少なくありません。
複数の大学に出願するとき、1つの志望理由書をコピーして、一部だけを書き換える。その書き換えを忘れる。すると、A大学に提出した書類に、B大学の名前が残ってしまいます。
これがどう見えるか、想像してみてください。
「基本的な確認ができない学生」。そう思われます。中身を読む前に、印象が決まってしまいます。
提出前に、必ず「この大学の名前と学部名で合っているか」を確認してください。 これだけで防げる失点です。
【現場の話】内容を読むとき、何を見ているか
形式確認が終わると、いよいよ内容を読みます。
このとき、審査する側が確認しているのは、次の5点です。
1. 「この大学・学部でなければならない」理由があるか
どの大学にも出せる内容ではないか。この大学固有の情報が書かれているか。
2. 学部で学ぶ内容を、ちゃんと理解しているか
学部の名前だけで選んでいないか。実際に学べる内容と、学びたいことが一致しているか。
3. 自分(本人)の経験・視点が書かれているか
一般論だけになっていないか。この学生でなければ書けない内容があるか。
4. 将来の目標と、学びがつながっているか
学部で学ぶことと、卒業後にやりたいことが、論理的につながっているか。
5. この内容を、面接で自分の言葉で話せそうか
これが最も重要かもしれません。志望理由書と面接は、必ずセットで見られます。
この5点は、評価される志望理由書に共通する要素です。逆に、どれか1つでも欠けていると、審査する側は「もう少し聞かないと判断できない」という状態になります。
審査側が「不安」を感じる志望理由書
「悪い」というより、「このままでは判断しにくい」。そう感じさせてしまう志望理由書があります。
代表的なものを挙げます。
- 大学名を変えれば、そのまま他大学に出せる内容
- 「日本が好き」で終わっていて、学問への意欲が見えない
- 将来の目標が大きすぎて、具体性がない
- 教員の名前は書いてあるが、研究内容を理解していないように見える
- 文章がきれいすぎて、本人が書いたと思えない
これらは、いずれも「落とすため」の理由ではありません。「判断できない」ための理由です。
そして、判断できない学生は、判断できる学生に負けます。
志望理由書の準備は、面接の準備でもある
最後に、最も大切なことをお伝えします。
志望理由書に書いた内容は、面接で必ず聞かれます。
面接官は、あなたの志望理由書を手元に置いて、それを読みながら質問します。「ここに書いてある○○について、もう少し説明してください」
このとき、自分で考えて書いた志望理由書なら、答えられます。誰かに作ってもらった志望理由書なら、答えられません。
つまり、志望理由書を自分の力で書き上げることが、そのまま面接対策になるのです。
逆に言えば、ここで手を抜くと、面接でも失敗します。書類と面接は、切り離せません。
まとめ
- 志望理由書は、あなたの考えを伝えられる唯一の書類である
- スコアは「資格」、志望理由書は「理由」。別のものである
- 審査は、まず形式確認から始まる(大学名の誤記に注意)
- 内容では、5つのポイントが見られている
- 志望理由書の準備は、そのまま面接の準備になる
「読まれているのだろうか」という心配は、必要ありません。読まれています。
だからこそ、書く価値があります。
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※この記事について
- 本記事で紹介する内容は、大学の入試業務を通じて見てきた傾向をもとにしています。
- 審査の基準は大学によって異なり、合格を保証するものではありません。
- 具体的な出願要件は、必ず各大学の募集要項を確認してください。