志望理由書を書いていると、こう思うことがあります。
「もっと立派に見せたい」
自分の経験は平凡だ。もっと熱意があるように書きたい。他の学生に負けたくない。
その気持ちから、こんな文章が生まれます。
「私は小さいころから、日本経済の専門家を目指してきました」 「高校生のとき、日中関係の重要性について深く研究してきました」 「幼少期より、国際社会の課題解決に強い使命感を抱いてきました」
立派に聞こえます。しかし、評価されません。
なぜでしょうか。
「不自然さ」は、必ず伝わる
理由は、はっきりしています。
不自然だからです。
「小さいころから日本経済の専門家を目指してきた」
——本当でしょうか。
10歳の子どもが、日本経済の専門家を志すでしょうか。ありえないとは言いませんが、きわめて珍しいでしょう。
審査する側は、毎年何百通も志望理由書を読んでいます。不自然な誇張は、すぐにわかります。
そして、こう思われます。
「この学生は、話を大きくしている」
誇張がもたらす、最悪の結果
誇張には、想像以上に大きな代償があります。
代償1:信頼性が下がる
1つの誇張が見つかると、志望理由書全体が疑われます。
「ここが誇張なら、他の部分も誇張ではないか」 「この経験は、本当にあったのか」
信頼は、一度失うと取り戻せません。
代償2:面接で、必ず崩れる
これが最も恐ろしい結果です。
「高校生のとき、日中関係について深く研究してきました」と書いた学生に、面接官はこう聞きます。
「その研究について、くわしく教えてください」 「どんな資料を読みましたか」 「どんな結論に至りましたか」
研究していないのですから、答えられません。
その瞬間、志望理由書がうそだったことが証明されます。
代償3:本当の自分が消える
これが、最も残念な結果です。
誇張した志望理由書には、あなたがいません。
そこにいるのは、「立派に見せようとした、架空の学生」です。
審査する側が知りたいのは、架空の学生ではありません。あなた自身です。
誇張は「自信のなさ」の表れ
厳しいことを言うようですが、誇張する学生は、自分の経験に自信がない学生です。
「私の経験なんて、大したことがない」 「もっとすごいことを書かないと、落ちてしまう」
その不安から、話を大きくしてしまいます。
しかし、これは大きな誤解です。
審査する側は、劇的な物語を求めていない
はっきり言います。
大学は、劇的な体験談を求めていません。
求めているのは、次のことです。
- 本当にあった経験
- そこから本当に生まれた問い
- その問いに答えるために、本当に学びたいこと
すべて「本当に」です。
平凡な経験でも、まったく問題ありません。
たとえば、こんな経験でいいのです。
- 家族の会話の中で、ある問題に気づいた
- アルバイト先で、疑問に思うことがあった
- ニュースを見ていて、「なぜだろう」と思った
- 日本に来て、母国との違いに驚いた
これらは、すべて立派な出発点です。
大切なのは、経験の大きさではありません。そこから何を考えたかです。
「等身大」が、最も強い
実は、等身大の志望理由書のほうが、はるかに強いのです。
理由は3つあります。
1. 面接で崩れない
本当にあったことは、いくら掘り下げられても答えられます。詳細を聞かれても、記憶があります。
うそをついていない学生は、面接で強い。 これは絶対です。
2. 具体性が生まれる
本当の経験には、具体的なディテールがあります。
いつ、どこで、誰と、何があったか。何を感じたか。
誇張した話には、これがありません。だから、抽象的で薄い文章になります。
3. その学生「らしさ」が出る
審査する側が最も見たいのは、「この学生でなければ書けない何か」です。
誇張した志望理由書は、みな似た文章になります。「立派に見せる」方向は、みな同じだからです。
等身大の志望理由書だけが、その人にしか書けません。
誇張していないか、チェックする3つの質問
いま書いている志望理由書を読み返して、自問してください。
質問1:「これは、本当にあったことか」
書いた出来事は、実際に起きたことですか。時期は正確ですか。
質問2:「面接で、これについて5分間話せるか」
書いたことについて、細部まで聞かれても答えられますか。
答えられないなら、その記述は削ってください。
質問3:「これを、家族や友人が読んだらどう思うか」
あなたをよく知る人が読んで、「そんなこと言ってたっけ?」と思う内容があれば、それは誇張です。
熱意は、言葉で示すものではない
最後に、大切なことを言います。
「私は強い意欲を持っています」 「誰よりも真剣に学びたいと考えています」
こう書いても、熱意は伝わりません。
熱意は、行動で示すものです。
- どれだけ大学を調べたか
- どれだけ具体的に将来を考えたか
- どれだけ自分の経験と向き合ったか
これらが、志望理由書に表れます。 そして、それが熱意の証明になります。
「頑張ります」と100回書くより、シラバスで見つけた授業名を1つ書くほうが、はるかに熱意が伝わります。
まとめ
- 誇張は、必ず不自然さとして伝わる
- 1つの誇張が、志望理由書全体の信頼を失わせる
- 面接で掘り下げられれば、必ず崩れる
- 大学は、劇的な物語を求めていない
- 平凡な経験でも、そこから生まれた問いが本物なら十分
- 等身大の志望理由書は、面接で崩れず、具体的で、その人らしい
- 熱意は、言葉ではなく、調べた量で示す
あなたの経験は、あなただけのものです。
大きく見せる必要はありません。そのまま書いてください。
そのほうが、ずっと強い志望理由書になります。
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