「大学のことを、ちゃんと調べて書きました」
そう言って提出された志望理由書に、こんな文が並んでいることがあります。
「貴学の『グローバルリーダーを育てる』という理念に共感しました」 「『実践と理論を融合させた教育』に強く惹かれています」 「『世界に開かれた学びの場』で成長したいと考えました」
確かに、大学のことは調べています。
しかし、これは評価されません。それどころか、逆効果になります。
なぜでしょうか。
その言葉を書いたのは、大学自身です
理由は、シンプルです。
その言葉は、大学が自分で作ったキャッチコピーだからです。
考えてみてください。
あなたが書いた文章を、そのまま返されて、感心する人がいるでしょうか。
「なるほど、あなたも同じことを考えているのですね」——なりません。
「これは、うちのパンフレットの言葉だ」——そう思われるだけです。
審査する側には、一目でわかる
大学の審査担当者は、自分の大学の広報物を熟知しています。
パンフレットの表現。公式サイトのキャッチコピー。学部案内の見出し。
これらは、毎日目にしている言葉です。
その言葉が志望理由書に現れれば、一目でわかります。
そして、こう思われます。
「この学生は、パンフレットの表紙しか読んでいない」
なぜ「表紙しか読んでいない」と思われるのか
ここが重要な点です。
パンフレットのキャッチコピーは、最も目立つ場所に書かれています。表紙。トップページ。冒頭の見出し。
つまり、少しでも見れば、必ず目に入る言葉です。
だからこそ、それを引用しても、「調べた証拠」にはなりません。むしろ「それしか見ていない」証拠になってしまいます。
本当に調べた学生は、もっと奥のページにある情報を書きます。
- カリキュラムのページにある、具体的な授業名
- 教員紹介のページにある、研究テーマ
- シラバスに書かれている、授業の到達目標
これらは、探さなければ見つかりません。 だからこそ、価値があります。
キャッチコピーは「中身がない」から使われている
もう1つ、知っておくべきことがあります。
大学のキャッチコピーは、あえて抽象的に作られています。
「グローバル人材の育成」 「実践的な学び」 「世界に開かれた大学」
これらの言葉は、どの大学でも使えます。 実際、多くの大学が似たような言葉を使っています。
つまり、キャッチコピーを引用した志望理由書は、結局「どの大学にも出せる志望理由書」になってしまうのです。
「この大学でなければならない理由」を書くつもりで、逆に「どの大学でもいい志望理由書」を作っている。
これが、最大の皮肉です。
では、パンフレットは読まなくていいのか
そんなことはありません。
パンフレットは、読んでください。 ただし、使い方が違います。
❌ 間違った使い方
キャッチコピーをそのまま引用する
⭕ 正しい使い方
パンフレットから具体的な事実を拾う
パンフレットには、キャッチコピー以外にも情報があります。
- 学部で学べる分野の一覧
- 主要な授業科目
- 教員の紹介
- 卒業後の進路
- 留学プログラムの内容
これらは、事実の情報です。 キャッチコピーではありません。
こうした事実を拾い、自分の言葉で、自分の志望とつなげて書く。 これが正しい使い方です。
「共感しました」は、要注意の言葉
志望理由書でよく見る表現があります。
「〜という理念に共感しました」
この言葉が出てきたら、要注意です。
なぜなら、「共感」は、何も説明していないからです。
- なぜ共感したのか?
- 共感したから、何をしたいのか?
- その理念は、あなたの何とつながっているのか?
これらが書かれていなければ、「共感しました」は空虚な言葉です。
もし理念に本当に共感したのなら、「なぜ共感したのか」を、自分の経験から説明してください。 そこまで書けば、価値のある文になります。
自分の言葉で書くとは、どういうことか
「自分の言葉で書きなさい」
よく言われることですが、意味がわかりにくいかもしれません。
具体的には、こういうことです。
1. 借りてきた言葉を使わない
パンフレットの言葉、教科書の言葉、AIが生成した言葉。これらは、あなたの言葉ではありません。
2. 説明できる言葉だけを使う
面接で「これはどういう意味ですか」と聞かれて、答えられる言葉だけを使ってください。
「グローバルリーダーとは、どういう人だと思いますか?」
この質問に答えられないなら、その言葉を使う資格はありません。
3. 具体的な事実で語る
抽象的な言葉より、具体的な事実のほうが、はるかに説得力があります。
「実践的な学びに惹かれました」よりも、 「□□という授業では、実際の企業のデータを使って分析すると知り、△△を学びたいと考えました」
後者のほうが、明らかに調べています。 そして、自分の言葉です。
まとめ
- パンフレットのキャッチコピーは、大学自身が作った言葉
- そのまま引用しても、「表紙しか読んでいない」と思われる
- キャッチコピーは抽象的なので、どの大学にも出せる志望理由書になってしまう
- パンフレットからは、キャッチコピーではなく事実を拾う
- 「共感しました」は、理由を説明しなければ空虚な言葉
- 使ってよいのは、面接で説明できる言葉だけ
大学のことを調べる姿勢は、正しいのです。
問題は、どこを見ているかです。
表紙ではなく、中を見てください。キャッチコピーではなく、事実を見てください。
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